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この土地に家が建つまで~札幌市「澄川の家」編~

2016/11/10

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外から見ると一見要塞のよう。黒いガルバリウムで覆われた建物は、ところどころに小さな窓らしきものがあるのみで、中の様子はわかりません。閑静な住宅街に建つこの建物は一体…?

こちらの土地は、住宅密集地にある多角形の敷地。「傾斜地や変形した土地など個性のあるものに惹かれる傾向がありました。普通の土地だとワクワクしなくて」というお施主さんが、4年かけて探し、あえて選んだ土地です。

この土地の個性を輝かせるために配されたのが3つの中庭。宅地と道路に囲まれているため、プライバシーを守るのは重要課題。その一方で開放感も得るという真逆のことを、この庭が可能にしたのです。屋根上から見ると、中庭の様子が確認できます。

中庭をより一層楽しむために、水盤が設けられているのもこの家の特徴。できあがりが楽しみです。

中庭のR部分の塗壁下地。仕上がりは職人さんの腕にかかっております。

札幌軟石を利用した水盤がカタチになりました。

中に入ると外から見たときの印象は一変。明るい住宅であることがわかります。特にリビングには中庭と坪庭の2方向から光が入って明るい! 中庭を挟んだ向かいは個室となっているため、人目も気になりません。角を切り出したような三角の坪庭を見ると、壁の一部からは庭の緑がのぞきます。変形した土地の中に要塞のような壁を持つ家を建て、その壁の中にさらに坪庭や中庭をしつらえることで、宅地と道路に挟まれた場所でのプライバシーと快適空間を確保したのです。

プライバシーを確保しつつ、どうやって閉塞感をなくすか。そう考えた時に出てきたのが、さんかくの平屋、というプランでした。三辺のうち一辺を長くし、動線と視線を誘導。さらにその両端を坪庭とエントランスという外部へと導くことで視線が抜ける効果を狙いました。その狙いはぴたりとはまり、実際の面積以上の広さを感じることができます。実面積はコンパクトなので動線はシンプルに。その一方で気持ちがのびやかに過ごせる空間となりました。