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この土地に家が建つまで ~札幌市「緑蔭の家」編~

2016/09/30

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「あれっ、ここって以前は何があった場所だったっけ?」新築の家が建ったところを見て、そう思ったことありませんか?
実際に「土地」が「家」になる行程は、土地の場所や形状・条件によってさまざま。森だった場所を拓いて建てるのと、住宅が密集する狭小地に建てるのではまったく異なる家づくり。
そんな「家ができるまで」をちょっと覗いてみましょう。

元は300坪の森!そこを開墾してつくったのが緑蔭の家です。

家のまわりのふんだんな緑を見ればそれも納得。緑に抱かれているような印象ですが、よく見ると手前から奥にかけてのぼり斜面になり、建物もその斜度に合わせて手前が平屋、奥は2階建てに。その2階リビングと外の地面の高さが同じというちょっと変わった構造で、実は物理的にも自然が家を立体的に包み込んでいるのです。

内装には天井にいたるまで道南杉がふんだんに使用され、屋内から外を見たときにも緑がより引き立つように計算。デザインには曲線の壁が採用されるなど凝った面もあります。広い敷地面積を生かして建物自体も大きく、アプローチから家に近づくと威風堂々とした佇まいが迎えてくれます。しかし、外壁にも杉材がふんだんに使われているせいか、威圧感よりもどこか大きな温もりを感じます。

はじめはこんな森でした。ここから木を切り、山を登り、道をつくって、やっと基礎工事に入ることができます。

ここは本当に住宅なの?!と思われあるような壮大な計画が進んでいます。型枠職人さんの技術が光る、アール形状の型枠。

コンクリートを流し込んだ型枠が外され、基礎工事が完了。少しだけ家のかたちが見えてきました。住宅には木造以外にも、このようにコンクリート構造RC造・鉄骨造S造・それらを複合的に組み合わせた特殊混構造の建築物があります。土地や暮らしに合わせて、技術者がいかんなく力を発揮する場面です。

大工さんの建て方が進み、いよいよ上棟。屋根や建物がR形状になっているので、外部の下地など大工さんの作業が大変そうです。

外壁の板張りが始まりました。道南杉の色合いと質感が非常に良い雰囲気。室内も構造材を一部現しにして、木をたくさん感じられるようになっています。

内装も杉板羽目板貼り。

外構も着々と工事が進み、仕上げ作業に向かっています。森を切り拓いてできた土地なので、舗装や芝貼りなどのボリュームもたっぷり。

開墾からの家づくり、ふんだんに使われた木材、こだわりのデザイン。訪れる人を「おお!」とうならせるポイントはいくつもありますが、それはすべて「職人泣かせ」の要素だったのかもしれません。特に木の仕上げ部分が多かったため、大工仕事は通常は2か月のところ3か月かかったとか。住まい手が直接手に触れることを想像しつつ「安全で暮らしやすく」に配慮された工事です。家の建設はチームプレー。現場監督は設計図をもとに50枚以上もの詳細な図面を書き、現場を切り盛りします。

チームが一丸となって高いモチベーションで挑んだ緑陰の家は、元の自然環境とすばらしく調和した建物に。外から見ても家の中から見ても自然をたっぷり感じます。まるで郊外の森の中に住んでいるよう。そんな暮らしが札幌市内で実現しました。