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この土地に家が建つまで ~札幌市「石山の家」編~

2016/11/24

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「くねくねに住む。」
そんなタイトルが付けられたこの家。

窓から見えるのは一面のグリーン。まるで山中にポツリと建つ家からの景色のようですが、これこそが「くねくね」マジック!実は道路にも接した土地ですが、その面は全面壁としプライバシーをキープ。その一方で、森に面した方に窓などの開口部を設け、自然の景色を家に取り込むことにしました。通常の四角い家であれば、一面すべて壁にしてしまうと息苦しさを感じそうですが、階段状に「くねくね」とした多面のつくりなので問題なし。最大270度の景色を見られるようにもなりました。

台形がひっぱられたような形をしていて、とても個性的な土地。「くねくね」とした家のかたちも、この土地をどう有効に使うかを考えた結果生まれたものです

建て方途中の様子。だんだんと「くねくね」のかたちが立体的に見えてきました。長方形や正方形でない変形した土地は、一般的な家づくりではデメリットとされるような条件ですが、階段状にすることで土地の形に影響されず十分な床面積を確保できました。

屋根下地板が張られ、軽量梁の存在感が際立っています。

屋根材が葺かれ、外部付加断熱も完了。

最近では少なくなった造り風呂の施工中。

完成したお風呂は、この美しさ!

建物が折れ曲がっているので家の隅々まで陽の光がはいり、長方形の家では実現できない開口部の視野の広がりも確保。ほとんどの部屋から自然の景色が見え、各部屋から庭やテラスへもアクセスできるようになりました。

実はこの家の住まい手の勤務地は札幌中心部。通勤の利便性を考えれば、もっとほかの場所に家を建てるという選択肢もあったでしょう。それでも郊外のこの場所に住まうことを決めたのは利便性よりも自然の中で過ごす時間を大事にした結果。変形土地の使い方を吟味するうちにでてきた「くねくね」が住まい手の希望をかなえ、自然が身近にある豊かな毎日を実現しました。

いい土地かどうか。それはすなわちその人が望む暮らしができる場所かどうか。不動産価値とはまた別の尺度で計られます。今回のこの土地のように、デメリットと思われる要素がある土地は相場よりも比較的安く手に入るため、発想を転換させればその分の予算でより広い土地を購入したり、家づくりに投資してひと味違ったぜいたくな暮らしを手に入れることも可能です。

 

北国の冬を快適に過ごすための高度な技術とその住まい手が望む暮らしを実現するためのアイデアさえあれば、「いい土地」はまさに人の数だけあると言っても 過言ではありません。改めて、自分の理想の暮らしがある場所という視点で土地を見ると、「いい土地」に出会える確率が上がるかも。「個性」をメリットにす るのもデメリットにするのも、住まい手自身かもしれません。